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ファミリーマートは、1972年に西友ストアー企画室に小型店担当が設置されたことから始まった。翌73年には実験第1号店を埼玉県狭山市に開店。78年には西友ストアーファミリーマート事業部を発足し事業を開始。1981年「株式会社ファミリーマート」発足。2013年には国内1万店を達成。現在も、国内外で店舗数を増やしている。
上田準二会長は、「小売はお祭り」というユニークな発想で事業を進めてきた。KAIKAプロジェクトでは「個の成長、組織の活性化、組織の社会性」を同時実現するプロセスを追究しており、同社の方針は重なる点が多い。上田準二会長に、人材育成のポイントと、国内にとどまらないファミリーマート独自の社会貢献について伺う。
Q:御社は、日本発祥のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)として1973年に埼玉県で実験第1号店を開店し、1978年にはフランチャイズ方式を導入しています。上田会長が入社されてから現在まで事業を継続、発展させていった裏には、どのような経営方針があったのでしょうか。

上田 私が社長に着任した2002年当時、社員、加盟店、取引先がともに成長し、発展することをめざした「共同成長の精神(CO-GROWING)」という理念が存在しました。一方、少子高齢化や単身世帯の増加、働く女性の増加などの社会構造変化が起きる中、生活者の思考や社会環境は毎日のように変わってきています。その変化に対応できるかどうかで生活者から支持される企業とそうでない企業とがはっきりしてきます。お客様から支持され続けるためには、当然のことながら店舗のクォリティーを上げる必要があります。欲しい商品がいつでも置いてある、いつでも気軽に立ち寄れる環境にするなどの店づくりです。
私たちはコンビニ事業を通して、「社会・生活インフラ企業」になりたいという想いがあります。社会的経済基盤と社会的生産基盤となるもの、つまり道路や鉄道、下水道、病院などと同じように、皆さまの生活になくてはならない存在。買い物やサービスはもちろん、フランチャイズビジネスですから加盟店とのネットワークの連携などにより、あらゆるニーズを満たすことができれば、お客様から支持され続ける存在になれると思います。

Q:年中無休のうえ24時間営業が主流のコンビニ事業は、日本国内の多様化するライフスタイルにマッチするように感じます。インフラ企業として利用してもらうというのは、具体的にはどんな活用法があるのでしょうか。

上田 おっしゃる通り、日本人のライフスタイルは多様化しています。毎日の買い物や調理に手間ひまをかけられない人が多くなっています。近くにあるお店で、自分の都合のいい時間に、必要なものを購入したいと考える消費者はたくさんいらっしゃるでしょう。
このようなニーズに応えるため、利便性を追求できるような機能を拡大していきました。地域ごとのニーズに合わせた商品を取り扱う物販機能の進化に加え、ATMを設置し各種料金の収納を代行する金融機能も強化しています。また、店内に設置しているマルチメディア端末を使って、チケットを発券するなどのサービスも充実させてきました。
コンビニの利便性や品揃えに、ドラッグストアのもつ専門性やカウンセリング力を融合させた店舗も存在します。
また、2011年の東日本大震災以降、家からも職場からも距離が近くて、年中無休で時間を問わず営業し、必要な商品やサービスが揃っている、といったコンビニの利便性が改めて評価されてきています。

Q:海外でもファミリーマートの店舗をよく見かけるようになり、グローバル企業としても存在感を示しています。これだけの数の海外展開を可能にした背景には、どのような努力があったのでしょうか。国外へ出店する際の信念などを教えてください。

上田 日本企業の海外展開といえば、国内に比べてコストが抑えられるから利益が容易にあがるためだと捉える人もいるかもしれません。しかしそのような目先の理由ではなく、当社が考えるグローバル展開は、出店先の国に貢献できなくては意味がない、というものです。それが海外展開の第1目的ですよ。
現在は台湾、タイ、中国などに多く出店していますが、海外展開は、生活者のインフラを担い、国の繁栄に資するものでなければなりません。現地で従業員を雇って店舗を運営してもらう。地元企業と連携してビジネスを進める。そうやって現地の国民や企業に貢献できて、初めてこちらにも利益が生まれるというのが本来あるべきしくみです。
この数十年、日本企業はグローバル化を謳ってきましたが、歴史を振り返れば、日本はずいぶん昔からグローバル社会でした。外国と交流してきた歴史は長く、その頃から、互いの利益になるグローバル化はあったのです。

Q:出店した国の発展まで考えた海外進出は、相互によい経験の蓄積が期待できそうです。それは店舗づくりにも影響するでしょうし、働く社員の能力を開花させることにつながると思います。日本からどのような働きかけがあったのでしょうか。

上田 人材育成については、現地の従業員が日本にきて学ぶ機会を設け、1つの事業が地域に根づくまでは、日本から社員を派遣して徹底的に指導します。マーケティング、商品開発、広報戦略など、コンビニ事業の全分野で専門スタッフが赴き、現地の人たちで経営者や従業員を育てます。
 海外の店舗づくりで重要なことは、「メイド・イン・ジャパン」の小売りサービスと現地ニーズとの擦り合わせです。国によって需要がまったく違いますから、日本で売れている商品をそのまま海外に運んでいっても売れません。小売業を現地化させるためには、現地パートナーの意見を聞いて、地域に根差した店づくりをめざす必要があります。

Q:社員や加盟店の方たちが、一人でも多く意欲をもって仕事に取り組めるように工夫していることはありますか?

上田 私は社長就任以来、社員や加盟店には「小売はお祭りだ」と言っています。お祭りのときには、肩がすりむけるくらいとても重たい御神輿を担ぎます。疲れるし、痛いけれども気分は高まり、達成感は大きい。
仕事も同じですよ。自分たちが率先して行動し、それで高い果が出たときは達成感が大きい。やらされ感を味わいながらイヤイヤ仕事をこなしたときとは違う。成果が出れば仕事が楽しくなり、出社が楽しみになります。何事も自ら楽しんで取り組むことでステップアップし、昇進昇格にもつながります。
もちろん、そこまでのモチベーションを保つためには、「お祭り」をきっちり見てくれる存在が必要です。社長をはじめ、部長や社員、加盟店のみんなが、現場で活躍する1人ひとりの働きをしっかり見ていること。例えば、「君の店では、お客様のことを考えた店づくりが進んでいるね」とちゃんと評価するには、現場を見ていないと無理です。声をかけられた人は、「自分の働きを見てくれていたのか」とうれしくなり、仕事への意欲がますます高まりますよ。そういう状況を増やしていくのです。

Q:これまで多くの部下たちを育て、全社的な人材育成にも力を入れてこられたと思います。人材育成についての信念をお聞かせください。

上田 上司は「この人には必ず能力がある」と信じて部下と接すること。
これは部下の成長に欠かせません。
たまに「人事異動があると、デキの悪い部下ばかりが私の下にくる」と話す管理職がいます。私はそういう意見を耳にすると、「それは部下のデキが悪いのではなく、君の指導力不足だよ」と返します。自分の思うように動いてくれない部下を本人だけのせいにするのは間違いです。
そういう上司はたいてい仕事の結果だけを見て、デキがいい、デキが悪いと判断するものです。それで、部下を無能呼ばわりする。そんなことをいくらつづけても何も変わりません。部下の能力が低いと感じたら、どう働きかければ成長してくれるかと必死に考えるのが管理職の仕事です。
学校の通信簿でいえば、5段階評価で「1」の人を排除する発想でなく、「1」の人をできるだけ少なくすることが目標です。そうすると、「自分にはこれができたのだから、次はあれもできるようになろう」と、ステップアップを望む人が増えていきます。仕事ができる一部の人たちを特別扱いするのではありません。
部下の能力を引き出せたら、そのノウハウを次世代に伝えていくことも忘れてはいけません。教育を継続させ連鎖させていく。それが、組織の活性化につながるのです。